大原参道ビル
大分県日田市、大原八幡宮の参道沿いに位置するアパレルセレクトショップの旗艦店。敷地は、商店や住宅が混在する旧い街並みにあり、自然が乏しい印象を受けた。メンズとレディスフロアを有する、歴史的重みのある大原参道の名に相応しい建築をつくる計画である。
セレクトショップには、内部空間を伝える透明性が大切であるが、単にガラスを多用するだけでは入店客にとっては通りからの視線が気になり、落ち着いて品定めすることができないだろう。そこで、敷地レベルが道路面から大きく下がっていたことと、支持地盤を考慮した際に地階を設けることが施工上の利点となることから、メンズフロアを半地下に、レディスフロアを高床の1階に配し、内外の視線レベルを違えた。また、透明性の高い空間の周囲に、コンクリート格子梁によって持ち出され建築を上から包み込むような「帯」をまわして緩衝空間を設けた。物理的には屋外である緩衝空間には密に樹木が植わり、光が降り注ぐ。内部からは豊かな緑と共に、質感の強い斫り仕上の「帯」に光の陰影が移ろい、流行によって刹那に変わりゆく服を惹き立てるための背景となる。外部から視た「帯」は雨風に晒され黒ずんでゆき、それに護られたコンクリート躯体とショップ空間がより際立っていくと考えている。建築が服の背景と化す一方、この建築の世界観に惹き込む力強い造形が内外連なるコンクリート格子梁である。その水平方向への伸びやかさと圧倒的な量感を、アプローチとなるピロティに足を踏み入れた時から体感することになる。
これから歳月を重ねて建築と樹木が調和し、この地に馴染んでいくこと、そして西に望む大原八幡宮のような清々しい空気が漂う場になることを願っている。
This flagship shop of multi-brand apparel is located in Hita city, Oita prefecture. The architect put emphasis on transparency of the interior, for shoppers inside the store feel uncomfortable when they are seen from outside the glazed openings. To make a gap of eye levels of people in store or on the street, men’s floor is half underground and the ladies’ floor is the raised ground floor. The concrete beams and columns surround the store to make buffering voids around under a thick concrete overhang. The repeated stark concrete lattice expressively induce visitors to step in the store. Once you enter the piloti, you will be impressed with the strong horizontal lines and the volume of the concrete.
【大原参道ビル】
設計 : TORU SHIMOKAWA architects
構造 : Atelier742 / 高嶋謙一郎
写真 : 鈴木研一
所在地 : 大分県日田市
計画種別 : 新築
用途 : 物販店
主体構造 : 鉄筋コンクリート造 一部木造
規模 : 地下1階 地上1階 塔屋1階
敷地面積 : 242.18㎡
建築面積 : 181.29㎡
延床面積 : 288.96㎡
設計期間 : 2018年4月〜2019年1月
工事期間 : 2019年2月〜2020年2月
掲載誌
『新建築』2020年5月号 / P.144~153 (新建築社)
『商店建築』2020年8月号 / P.195~198 (商店建築社)
『FRAME』2020年8月7日 (FRAME / オランダ)
『designboom』2020年5月28日 (designboom / イタリア)