六本松の家

House in Ropponmatsu / 2021 /

照葉樹林が自生する大休山(おおやすみやま)を望むマンション一室の改修計画。南と東に開けた場所で、光を主題とした空間である。黄昏時に街並みがはっきりと姿を現すように、或いは真っ白な光の中にそのシルエットをおぼろげに見せる影絵のように、逆光の中で輪郭が浮かび上がるような印象的な光をつくりたいと考えた。
障子は、日差しのコントラストを弱め、均一的な発光面となる。この柔らかい光は一日の太陽の動きで光の強弱を変化させながら、各々の素材を順々に浮かび上がらせる。
床に敷き詰められた陶板はすべて本計画のためにひとつの登窯でつくられたものだが、偶発的な窯変で焼き締められたもの、灰が溶けて自然釉薬となったもの、藁の跡が残ったもの、それぞれに特徴をまとい、質感も色も一枚として同じものはなく表情を違えている。板中央を柔らかくむくらせた陶板は、南からの光を受け、そのフォルムを浮かび上がらせる。差し込む光に対して四半敷きとすることで、光を留めることなく室の奥へ奥へと柔らかく繋いでいる。
南の明るみと北に溜まる闇というひと続きの軸に対し、周囲を縁取るように配した掛込天井は、各室を緩やかに繋ぎ、光の絞られていく室の奥に次の室からの光が差し、光の抑揚を齎す。ホールの中央には東の寝室からも光を取り込んだ。南側とは異なる、静かな光がホールの暗がりにぼんやりと浮かぶ。
素材が光を、光が素材を浮かび上がらせる。光の満ち引きを通じて、季節や時間の移ろいを感じるだろう。




六本松の家

設計 : TORU SHIMOKAWA architects
写真 : 藤井浩司

計画種別 : 改修
用途 : 専用住宅
施工面積 : 87.12㎡




掲載誌

『コンフォルト』No.185 / (建築資料研究社)
『モダンリビング』No.262 (ハースト婦人画報社)
『和MODERN』Vol.14 (新建新聞社)