技能を受け継ぐこと
2016.05.23

ひとつ前の投稿画像の原木ピーラーを製材したものが、画像左側のピーラー材(ちなみに右手は杉芯去り材)。
大工がひとつずつ手刻みで加工している。


柱の足下に敷く野石(山石)の形状に合わせてノミを突いたもの。
これが狂い無く、柱と石がピタリと噛み合う。


工務店倉庫で寝かせて50年経つ桑材。樹齢50年以上だろうから、100年以上前の木を扱うと思うと背筋が伸びる。工務店はようやく日の目を見ると仰り、樹皮を剥ぐ。φ300mm程度の材は柱として誂える。根が付いているため、ごく自然な姿で納まるだろう。写真は、桑材は生石灰で焼いて仕上げるのが昔からの技法と教えていただき、実践していただく様子。

これらのような仕事が必要とされる場は少なくなりつつあるが、美しささえ感じる先人の技能は次の時代に受け継いでいかなければならない。職人育成も然り。そういう類いの話は建築業界の中でも施工側で耳にすることだが、僕ら設計者もその役割を担っていると思う。設計に真摯に向き合い細部を研ぎ澄ますと、自ずとつくり手の琴線に触れ、彼らが意気に感じる仕事となる。また、ただ伝統を反復するのではなく、現代との調和を図りながら、新鮮で豊かなものづくりをする。それはクリエイティブだと思う。既視感の無い目新しいものをつくることだけが建築家の仕事ではない、と自問自答している。