平和の家

House in Heiwa / 2018 /

福岡市中心の標高100mほどの鴻巣山風致地区に位置する。旗竿状の敷地には、視界と風の抜ける静かな環境があり、東側からは四王寺山に日の出を拝める風致地区ならではの変わらない景色が一望できる。近隣では高い塀をめぐらし、庭には法律を満たす程度の植栽が少しばかりの住宅が建ち並ぶ現状では、歳月を経ても豊かな景観になることは考え難い。そこで、この住宅では敷地に対して建築面積を必要最低限に抑え、東側にゆったりと庭を設けることにした。住宅はいうまでもなく建主のための私的なものだが、外部に面する庭は地域との共有資産でもある。室内に寄り添う東側の庭と路地のようなアプローチにも緑を多く取り入れ、幹が太り葉が生い茂る頃には、通り行く人にとっても心地のよい建築となることを願っている。
住宅を設計する際、平面における基本モデュールと高さの厳密な寸法調整に重きを置いている。今回の住宅では、柱のピッチを1,005mmという一見半端な数値を用いているが、これは見付90mmのピーラーやメルサワの柱と同寸の天井見切材、加えて格天井を構成する良質な赤ラワンを確保できる寸法から導いたものである。また1階の中央に彫刻のように設えたマッシブなコンクリートは、居間に敷き詰めた敷瓦から寸法を割り出している。寒冷紗張りの型枠を組み、基礎と同時に打設し、天端のみを研ぎ出して骨材断面を現した。寒冷紗による素朴さと研ぎ出しによる鋭利さが相まり新鮮な手触りとなっている。室内高さは1階最奥にある茶室スケールの和室を基準に、食事室、居間、玄関へとパブリック性を増すにつれ床レベルを下げていき、連続した格天井に対して、床の素材を畳、木、瓦、石へと変えることで空間を緩やかに分け、小さな住宅の中でも豊かな展開をもたせた。
上棟時の純粋な構造を生かすことを常々意識しているが、それに加え、身体が触れる素材を特に吟味し密度の高い仕上げを施すことで、新たな質の建築を目指した。





平和の家

設計 : TORU SHIMOKAWA (下川 徹, 種子島由佳, 久冨太一)
構造 : Atelier742 (高嶋謙一郎)
陶板 : 中川恭平
写真 : 鈴木研一

所在地 : 福岡県福岡市
計画種別 : 新築
用途 : 専用住宅
主体構造 : 木造在来工法
規模 : 地上2階
敷地面積 : 202.20㎡
建築面積 : 53.43㎡
延床面積 : 103.86㎡
設計期間 : 2016年9月〜2017年8月
工事期間 : 2017年9月〜2018年4月




掲載誌

『新建築住宅特集』2018年10月号 / P.106~113 (新建築社)
『コンフォルト』No.163 贅沢のある家 / P.52~61 (建築資料研究社)