小林の家

House in Kobayashi / 2019 /

古来より霊峰と崇められてきた高千穂峰や夷守岳などの霧島連山を臨む住宅。地方特有の大きく区画整理された1区画が敷地であり、山並みのみを借景として取り込む計画とした。また建主夫妻は共に幼い頃から寺院で過ごしており、大きな身体スケール感覚をもっていたため、山々のように伸びやかな家が相応しいと考えた。
南北2面が道路に面しているが、幹線道路である南側は高塀を全面に設け、北側からのアプローチとした。閉じた北側の一角に、薄日が差す門戸を設けることで、その柔らかな光に吸い寄せられるように内部へと導かれる。2層吹抜けの門戸は南壁面の腰下が開放されており、坪庭からの光を拡散し、安寧へと切り替わるほの暗い緩衝空間でもある。
建築全体は南東に開けた雁行配置として、佇まいに奥行きをもたせた。居間には柔らかい光を採り込むよう深い軒の広縁を設け、岬のように庭に張り出す食事室には家族が集う朝食時に気持ちよい光が入るよう、2面開放の空間とした。両者は半屋外である広縁を通しても繋がり、内外が伸びやかに連続する。
南庭は居住しながら徐々につくり上げていくことになっている。深い軒に護られながら経年した建築と庭が同化して熟成していく頃、霧島連山を借景としたこの住宅の完成となるだろう。そのような場所で、家族が穏やかな時間を過ごす姿を愉しみにしている。





小林の家

設計 : TORU SHIMOKAWA architects
写真 : 鈴木研一

所在地 : 宮崎県小林市
計画種別 : 新築
用途 : 専用住宅
主体構造 : 木造軸組工法
規模 : 地上2階
敷地面積 : 571.08㎡
建築面積 : 161.51㎡
延床面積 : 172.70㎡
設計期間 : 2016年10月〜2018年3月
工事期間 : 2018年4月〜2019年9月




掲載誌

『新建築住宅特集』2021年4月号 / P.82~89 (新建築社)